「あきらめない」
審査においてよく言われることに,初太刀の大切さがあります。

本日は六・七・八段を今年受審される方々を対象にした講習会が開かれたそうであります。
私も3年前にこの講習会に行き,審査に必要と思われることを細かく指導して頂きました。
特に審査形式の模擬立ち会いでは,現役バリバリ審査員の範士,教士の先生方から講評をいただくことができます。

全剣連の審査本番では,当日不合格であった者に対して,希望すれば成績をA〜Cの3段階で開示してくれるサービスがあります。
しかし,具体的にどこをどうすればよいかであるとか,不合格だったけれどもここが良かったというようなことは,残念ながら分からないのが現状です。
その意味で,この講習会は審査員のご意見を伺うことのできる数少ないチャンスなのであります。

さて,3年前の模擬立ち会いのあと,記録したペーパーを前に審査員役の講師の先生が仰ったことは

「えーっと,君は擦り上げ面がいいねぇー。うんうん,審査で擦り上げ面が出るように立会をしなさい」

でありました。


その年の審査本番の会場。
人間追いつめられると藁にも縋りたい気持ちになるもので,青ざめた顔に脂汗を浮かべて

「擦り上げ,擦り上げ」

と呪文のように自分に言い聞かせる私がおりました。



初太刀,こちらのねらい通りに相手が面にすっ飛んできた。

(ヤッター)


右に捌いて

パパン

と擦り上げ面が決まった!!
はずでした・・・(気持ちの中では)。

しかしなんとしたことでしょう,緊張のあまり擦り上げのタイミングがズレたのでしょうか,その瞬間を正確に思い出すこともできませんが,あろう事か

「スッコーン」

と空振りに終わったのであります。

初太刀に先をかけるでもなく,応じ技をねらって空振りなんて・・・。
普段ならアッチャーと頭が真っ白になって,舞い上がるところでありますが,その日はこの失敗でなんだかミョーに落ち着いてしまいました。

「そうかいそうかい,そんなら好きにやってやらぁー」

気持ちが落ち着くと,俄然相手がよく見えてきて,ジリジリ攻めて面,相手が焦って浮いたところを小手と,スッキリ立会を終えることができました。

結果は予想外の合格。

初太刀の大切さは否定しませんが,審査では何が起こるか分かりません。
最後まで諦めないことがどれだけ重要であるかを思い知らされる出来事でありました。


(それにしても,講師が擦り上げ面を意識させたのは,一度私に失敗させて開き直らせるためだったのだろうか・・・。


まっ,そんなはずはないよね。

でも,もしそうだとしたら・・・。


うーむ,またまた恐るべし,




・・・プレジデント範士)


(2007/2/12)
 事務局長のつぶやき
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