33・衛星の公転はなぜ左回り

大型衛星の公転が左回りなのは…なぜ?


太陽系の衛星のうち直径が1,000kmを越えるものは、15 あります。その中で逆回り(右回り)をしているのは、海王星の衛星トリトンだけです。
他の衛星14 はすべて左回りをしています。

一方で親惑星から遠く離れた所を回る衛星は、概ねその直径が小さく、右回りをしているものも多くあります。 15の内訳は、親惑星が左回転の自転をしている方向から見て…

地球…
 左回り____1__月

木星の衛星は……
 左回り___15__の内テーベ、イオ、ガニメデ、カリスト が径 1000 km以上
 みぎ回り_ 46__すべて径 1000 km以下

土星の衛星は_…
 左回り___24__テティス、ディオーネ、レア、タイタン、イアペスト が以上
 みぎ回り__ 7__すべて以下

天王星の衛星は…
 左回り___15__エアリエル、ウンブリエル、ティタニア、オベロン が以上
 みぎ回り__ 6__すべて以下

海王星の衛星は…
 左回り____9__すべて以下
 みぎ回り__ 2__トリトン が以上

火星の2小衛星、冥王星のカロンも左回りです。合計すると、左回り67、右回り61となっています。  左回りと右回りは、拮抗しているのに、大型の衛星が近傍に多くて、かつほとんど左回りなのはなぜでしょうか。偶然でしょうか?

推測を許していただけるなら…衛星がすべて太陽の引力に引かれて落下してきたもので、落下の途中でそれぞれの惑星に捕捉されたと想定しますと…

衛星はすべて黄道面の延長面上から太陽に向け落下してきたものに限られます。それ以外は太陽に吸収されてしまうか、太陽を回る彗星になるか、あるいは土星以遠を楕円軌道で回る深宇宙域小惑星になることとなります。

落下してくる小天体の速度は太陽系に近づくにつれて速度が速くなってきます。一方で惑星にも太陽を公転する移動の速度があり、その公転速度を記します。水星であれば直径 4,878 kmの 35 倍の距離となります。

 水星は ___172,800 km/時__直径の 35 倍の距離
 金星は ___126,000 km/時_______ 10.4 〃
 地球は___ 108,000 km/時________ 8.46 〃
 火星は____ 86,400 km/時________12.7 〃
 木星は____ 46,800 km/時_________0.33 〃
 土星は ____34,560 km/時_________0.29 〃
 天王星は___24,480 km/時_________0.48 〃
 海王星は___19,440 km/時_________0.39 〃

内側の4惑星は移動が速いと言えます。外側の惑星にしても3時間もすればその位置を通り過ぎていることになります.

落下してくる小天体は、太陽に近くなるにつれ高速度となりますし、惑星の方も内側の水星や金星は移動の速度が速いので、これらに衛星が誕生することは難しかったのかも知れません。

木・土・天・海王星は太陽から遠くにあり、公転の速度もゆっくりしており、加えて質量も大きく衛星を捕捉しやすい状況にあると思われます。

まず太陽めがけて小天体が落下し、その途中で、たとえば木星に出会ったとします。

この小天体が直径1,000km以上の比較的大きなものであれば、木星の公転の軌道に対して直角に進入してくることになった場合はまず衛星にはなれないでしょう。その直進する慣性も大きいため、木星が通過する前からでも後からでも木星に回り込めでないでしょう。推測を許していただけるなら‥です。

しかし、彗星のような軌道を描きながら同じ進行方向で外側から木星の公転軌道に近づいてくれば、しかも木星が進む前方に進入する経路であれば、木星の引力をより長時間受けながら近づくことになり、小天体の進行方向をより変化させることになるのではないでしょうか。

また太陽の引力と木星の引力を加算して受ける時期があることもプラスすると思われます。

地球から打上げた宇宙機器の加速方法にスイングバイという方法があります、木星に近づく小天体もこれにいくらか似た接近となれば、加速も減速も方向も大きく変化させると思われます。特に進行方向の前を通過してゆく減速スイングバイは小天体を周回軌道に捕らえるケースがあるのでは。<※文尾にスイングバイのリンクがあります。>

反対に後方に進入してきた場合は、木星の引力を受ける時間が短く、右に木星、左に太陽といったことにもなりなり、小天体はその軌道をいくらか変化させるかも知れませんが、結局は行き別れとなってしまうのではないでしょうか。

小天体が木星の前方に落ちて来る場合は、衝突の可能性も高いのですが、衛星として捕捉される可能性も高いのではないでしょうか。惑星はすべて左回りの公転をしていますので、この出合いで捕捉された衛星はすべて左回りとなります。

微小の天体は、質量も小さいため自身の進行方向を木星などによって変更されやすく、通過直後でも木星の引力によって衛星となる可能性があるように思われます。同じように横からの突入に対しても衛星となる可能性があると思われます。 微小の天体は、かえって前方から接近すると、進路が変更されやすいだけに吸収されてしまうことのほうが多いのではないでしょうか。

海王星は太陽系の最外側にあり公転速度も一番遅く、かつ太陽へ遠いため落下するトリトンの速度がさほどに増加しておらず、後ろ側からでもかろうじて衛星に取り込まれたのではないでしょうか。

冥王星は元から連星であったのか、太陽系に参加後カロンを捕捉したのか、どちらが捕捉したのかも分かりませんので、惑星と衛星の関係ではないような‥

   2008.2.5 

<リンク・スイングバイ航法について>

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