衛星が惑星の赤道面に並ぶ
太陽系には128もの衛星が見つかっています。それらの衛星は距離が親惑星に近いほど親惑星の赤道面にごく近い位置で公転しています。この現象は自転軸が97度倒れている天王星においても同様で、衛星は倒れた赤道面に沿っています。
この現象は親惑星から遠のくにつれて赤道面から離れており、反対周りをしているものも多く見受けられます。親惑星に近いほど赤道面に沿っているのはなぜでしょうか。
一例として木星の衛星61のうち16ほどを記してみました。
名前 距離 直径 対赤道面傾斜角
(万km) (km) (度)
メディシ | 13 | 40 | 0. | 0 |
アドラステ | 13 | 20 | 0. | 1 |
アマルテア | 18 | 198 | 0. | 4 |
テーベ | 22 | 100 | 0. | 4 |
イオ | 42 | 3,630 | 0. | 04 |
エウパ | 67 | 3,138 | 0. | 47 |
ガニメテ | 107 | 5,262 | 0. | 19 |
カリスト | 188 | 4,800 | 0. | 28 |
レダ | 1,109 | 16 | 27. | 5 |
ヒマリア | 1,148 | 186 | 27. | 5 |
リシテア | 1,172 | 36 | 28. | 3 |
エレイラ | 1,173 | 76 | 26. | 6 |
アナンケ | 2,120 | 30 | 148. | 9(逆回り31.1) |
カルメ | 2,260 | 40 | 164. | 9(逆回り15.1) |
バシフィア | 2,350 | 50 | 151. | 4(逆回り28.6) |
シノペ | 2,370 | 36 | 151. | 0(逆回り29.0) |
(他の45の衛星はすべてエレイラの外側にあり、一つを除いてすべて逆回りとなっています。レダ以降は、木星の対軌道面傾斜角の値となっていますので、赤道面に対しては、1.8度を引いたものがその値となります。)
公転半径距離(長軸と短軸あり)に対応して象徴的な軌道傾斜角の変わり様となっています、このことはほかの惑星を回る衛星も概ね共通しています。
親惑星から200万q以内にある太陽系の主立つ16を含む50の衛星のほとんどは傾斜角が2度以内であり、越えるのは月を含めて5しかありません。多くは1度以内の角度となっています。
なぜこんなことになっているのでしょうか?これら惑星の近傍を公転する衛星には何かの作用が働いていると思われて仕方ないのですが‥‥
木星の自転速度は時速45,720q、秒速なら12.7qであり部分的とはいえ驚異的とも思えます。木星や土星を真横から観測すると赤道径が大きくなっているのが見た目でもわかります。扁平率が「36」にあります。
扁平した天体からの引力は方向が変化するのではないでしょうか。
下の図は衛星が惑星を公転しているのを真横から観た図です、衛星は左上から手前・右下・向こう・左上と公転しているとします。
衛星が親惑星から受ける引力は、中心の1点からのみではなく、その球体のあらゆる所から、言ってみれば無数の引力を受けていますが、もし、まったくの球体で内部組成に大きな片寄りがなければ、手前のA側の重力の中心と、向こうB側の重力の中心とは、衛星の中心と惑星の中心を結ぶ直線にすべて重なります。当然のことですが‥‥。
しかし自転によって惑星が扁平に変形しますと、A側の重力の中心と、B側の重力の中心とはズレが生じます。引力の強い側A(衛星に近いグレーの部分)の重力の中心は、中心間の直線より明らかに下になります。一方の引力の弱い側Bの中心は中心間の直線より上になります。
これはABの双方を差し引き平均してやっぱり中心間の直線上…とはなりません。
近くであるA側の方の引力が大きく、差し引き平均しても中心間の直線より僅かに下になります。この「僅かに下」は衛星の仰角が小さくなるにつれて中心間の直線に近くなり、また衛星が親惑星から遠く離れるほど「僅かに下」がゼロに近くなります。
衛星の公転面は必ず親惑星の中心(重心)を通ります、衛星と惑星の距離は保たれますので、「僅かに下」になる引力源は、慣性速度と引力の合力である角速度を円周方向から更に下方へも曲げています。
衛星に働く下方へ向く力はごくごく小さい力ですが、これがかえって、つり合う距離を崩さないで親惑星の赤道面に向かう移動に好都合だったでしょう。
この下への作用は仰角が45度の辺りで最大となり、小さい仰角では弱体化します。かくして惑星近傍の衛星は、長い時をもって徐々に親惑星の赤道面に揃ってしまうのではないかと思われます。
太陽系では土星が最も扁平が顕著で、かつ非常に薄い輪にそのことが端的に現れています。扁平によって衛星が受ける「赤道面に向かう力」は僅かなものと思われます。親惑星から遠く離れた場合にはその作用がゼロに近いとしてもいいのではないでしょうか。
銀河の天体や物質が赤道面に並ぶ
宇宙には多くの銀河がありますが、その多くは中心部分にバルジと呼ばれる、星や物質濃度の濃い膨らみを中心として自転しています。
そして自転のためバルジは扁平になり、外側を回る星々や物質に対し銀河の赤道面に揃える作用が働き、銀河もまた円盤状になっているのでしょう。
特に近年は観測機器が精巧になり、新星爆発によって飛散したダストもはっきりそれとわかるようになりました。<※01>
宇宙で物質の大半を占めるとされる水素より遥かに重いこのダストは、大小の輝かない天体になったりしながら、銀河の赤道面に移動し堆積するのでしょう。銀河を横から眺めるとこのことが顕著にわかります。<※02>
太陽系の惑星の場合
太陽系の惑星は黄道面に揃う平面で周回していますが、これは 太陽の「赤道面に揃える作用」が働いたのではありません。太陽は左回りの自転をしていますが、それがあっても赤道が膨らむ変形はありません、真球の形を保っています。太陽系の場合は「31・惑星誕生の道のり」を御覧ください。
2008.2.4
<※01>上から眺めた銀河
<※02>横から眺めた銀河
追記
土星の環の起源について、、、、「土星に他の天体が衝突して天体はバラバラに砕けて、その飛散物が輪になった」、ということではありませんね。
土星から13万km離れて周回している最内側の衛星「パン」は直径20kmです(周回速度は405km/s)。この位置で20kmほど内か外に移動すれば周回速度は200m/sも異なります。
普通に考えてパンの重力(集合する力)は強すぎます、きっと大きな鉄塊か岩石の塊なのでしょう。
環の最外側は土星から12万km離れています。これより内になれば周回速度差はグングン大きくなっていきます。
土星に非常に接近した位置で衛星として捕まった小天体は、公転速度が高速となります。
位置に合致する速度の違いが、小天体自身の引力を上回ってしまうため小天体は球体を保つことができなくて公転の軌道上にバラけてしまいます。
もし 小天体が十分に大きくて、球体を保つ引力が強ければ、公転速度の違いに負けることもなく土星を周回します。しかし大抵は強い引力が災いして、衛星にはなれず、最初の出会い接近で 土星に吸収されるでしょう。
球体で公転できるか、バラけるか、のギリギリは「ロッシェの限界」と呼ばれています。
土星の環は内から外に幾層かに分かれています。これは時を替えて土星に捕らえられた少天体が随時バラけたため、と思われます。他の惑星に見受けられる環もすべてこの事情で出来たものでしょう。
また、地球と月の「ジャイアントインパクト説」や「天王星への衝突説」などの「バラけ→衛星再形成」を目にしますが、衝突にしろ、限界越えにしろ、一旦バラけた物体の引力では、親天体を回る公転速度差に勝てません。上記の事情を無視しています。
さらに、親惑星に突っ込んだ天体は、反発飛散しないでしょう。物質は限りなく微細になりますし、野球ボールのような反発などありません。直径100mの隕石が地球に落下したなら10mの欠片も残らないのが現実です。
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